フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリーです。1930年生まれの今年94才!です。もともと弁護士ですが、1967年に精神疾患者の犯罪者たちの矯正院のドキュメンタリ―『チチカット・フォーリーズ』を監督して、44本のドキュメンタリー映画を製作しています。一貫してナレーション・インタビュー・音楽は一切なしです。監督自身は57年以上にわたる100時間以上続く1本の映画と考えています。私は初めての体験でした。
この映画は、55年間、ミシュラン三つ星に輝くフレンチレストラン〈トロワグロ〉が舞台です。4年前にトロワグロで食事をし、食後、4代目シェフのセザール・トロワグロがテーブルに来てお話しします。その場で突然、この店での映画の撮影を打診したそうです。父のミッシェル・トロワグロと連絡をとり、30分後、快く受けてくれます。映画の中でも、いろんなお客と会話しているシーンが出てきますが、食事前、食事中などにシェフ親子、他のスタッフも、テーブルでお客様と会話しています。それが単なる挨拶ではなく、一緒に食事しているような会話をしています。尋ねられれば家族構成や、お店の方針など何でも詳しく応えています。
240分の長い映画で、途中休憩をはさみます。最初は、音楽もナレーションもなく、4時間も耐えられるかなと思いましたが、料理を日々工夫している姿、スタッフに指導している姿、原材料の仕入先に行って吟味している姿を見て、だんだん引き込まれていきました。オーナーシェフが、実際にお客様と接し、スタッフに指導し、料理もしています。宿泊施設もありますが、予約はネットではなく、娘さんが電話応対で受けています。奥さんは、内装は全て自分の考えで設計しています。
日本のことが映画のなかで度々出てきます。日本の職人気質に通じるものがあると思っていたら、パンフレットをみるとミッシェルは20代のときに、日本で開業していたことがあったそうです。
こんなお店が近くにあるなら、度々行きたいと思わせます。オーナー自身が店で働き、お客様と接し、日々努力している姿にとても共感しました。日本の御用達の精神が生きています。