
ワン・ビン監督のドキュメンタリー映画です。『青春』『青春・苦』『青春・帰』の三部作で、『青春』は昨年公開され、あと2作は今年公開されました。上映時間が各々215分、226分、152分と長く、上映館でも3日間通わないといけません。今回、神戸の元町映画館で最初の『青春』だけ観れました。
中国の長江デルタ地帯の織里での子供服工場での日常を2014年~2019年にわたって撮影しています。長江デルタ地帯は上海、杭州、蘇州、南京などの大都市を擁し、人口1億3,500万人で中国GDPの22%を占めており、日本のGDP616兆円(2024年)とほぼ同じです。多くの雇用を生み出し周辺から大量の農民工が集まっています。
10代、20代、なかには30代の若者が働いています。山崎豊子の『大地の子』で描かれた文革、その直後の時代とは異なり、若い人が元気よく生き生きと働いているのが印象的です。なんと労働時間は朝8時から夜11時と長く、昼食時と夕食時の2回、それぞれ1時間ほどの休憩があるだけで、果てしない労働の繰り返しです。ミシンで次々と洋服を編んでいきます。賃金は出来高払いでなんと半年ごとの支払いです。給料の前借りをしている工員が多いです。
半年のシーズンが終わるまでいくら貰えるのか分かりません。社長との交渉課程もズッとカメラが回っています。社長とはいっても、もともと工員として働いて独立したので、20代、30代です。織里では、1日で起業することが出来るそうです。工場の賃貸借契約と、15人ほどの工員と雇用契約を結べば、機械、材料、布など一切を現地調達できます。社員との交渉では借入金がこれだけ残っているから、賃上げは要求通りできないと突っぱねます。
工場の上の階に、工員は住み込みで、若い男女が大部屋で生活しています。男女の部屋はさすがに分かれていますが、当然のように子どもができ、お互い一人っ子のため、結婚そのものも親に相談しなければなりません。デジタルカメラで撮っているので、いつでもどこでも入りこんで延々と撮影しています。撮られている方も、意識せずに全く素の状態です。続編の2作も是非、観たいと思います。