第290回 映画『荒野に希望の灯をともす』

映画

2019年12月4日、アフガニスタンで凶弾に斃れた中村哲医師のドキュメンタリー映画です。映画を観る前に著書の『天、共に在り』を読み予習していました。本を読んでいたお陰で、映画の内容がとてもよく理解できました。本には写真も載っていましたが、映像で見ることで、凄さを再確認しました。

中村さんは福岡市博多区堅粕の出身です。6才から九州大学医学部を卒業するまでは古賀市に在住していました。小学生のときに、好きな昆虫を採集するために、古賀市の薦野のバス停から山に分け入ったと記しています。当初は、1984年にパキスタンのペシャワールに赴任して医療活動に従事します。

KBCシネマでの上映後、谷津賢二監督の舞台挨拶がありました。映画館は超満員で、補助席まで出ています。谷津監督は1998年から2019年の19年間、中村哲さんを撮影してきました。撮影のため、アフガニスタンに行くこと25回、通算450日滞在し、1,000時間のフィルムを残したそうです。

90分の映画にまとめるのは難しく、中村さんの言葉に導かれながらの映像となります。中村さんは寡黙な方でしたが、一言で表現すると「仁と義の人」とのことです。ご自身でパワーシャベルを操作したりして、広大な砂漠を緑豊かな地に変貌させ、医師の範囲を超えての活動です。それも、戦場の中での土木工事です。

こんな偉大な人が今の日本におられたのかと、驚きです。言葉も宗教も習慣も違うなかに飛び込んで、アフガニスタン人と一緒になっての用水路を完成させていきます。映画では、どれだけ現地の人から信頼・尊敬されていたかが伝わってきます。

しかし、完成した用水路が2010年の大洪水により流されてしまいます。さすがに中村さんは呆然としてしまいます。江戸時代に作られた筑後川の山田堰を参考に堰を築いていき、洪水に耐えきれるものを完成させます。まさに実行、行動の人です。私には菩薩様に見えました。

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