第286回 矢沢永吉さん、詐欺による損失35億円を完済!

キャッシュを残す経営

2022年7月19日に日本テレビ『ザ!世界仰天ニュース』に矢沢永吉さんがVTR出演し、巨額の詐欺事件に巻き込まれた心境を語りました。ドラマ仕立てで、その事件を再現しています。永ちゃん38才のときに、世界進出に備え、将来的にオーストラリアに音楽スタジオや音楽学校を作るために、ゴールドコーストに1万㎡(3千坪!)の土地とビル2棟を銀行融資35億円で取得します。現地法人を作り、知り合いにビルの家賃等の管理を依頼します。毎月、銀行残高はFAXをしてもらい、日本で確認をしていました。

管理をまかせていた知人が、現地法人の取締役に不正に就任し、不動産を担保に資金を借り入れます。その過程では、永ちゃんの筆跡を真似て契約書にサインしています。それを元手に投資やビジネスをしますが、案の定、失敗してしまいます。かなり豪遊もしたでしょう。

結局、現地法人が取得した土地とビルは、競売にかけれらて人手に渡ります。それが発覚したのが10年後の1997年、永ちゃん48歳のときです。FAXの預金通帳の計算が合わず、発覚しました。現地の知人と、日本での経理部長が共謀していたことが後の裁判で判明します。銀行通帳を改ざんしてFAXしていました。会計監査でも、銀行残高は、直接、銀行から受け取る直接確認が原則です。間接確認だと改ざんの恐れがあります。

一時は、酒におぼれ、髪の毛がゴッソリ抜けるほどショックを受けますが、顧問税理士から35億円は返済可能と聞きます。矢沢はもうダメだとの目を見返してやろうと、俄然やる気になります。なんとその後5年で返済完了します。ネット上では、1年に5億円返済でスゴいとなっていますが、税金のことも考慮しなければなりません。

当初の35億円は10年経過しているので、少なくとも25億円程に減っていると考えられます。不動産が無くなりましたので、35億円の除却損が計上されます。税効果を考えれば、その半分の17億円(当時の実効税率を50%として)の税金を支払う必要がなくなります。利益さえ出していれば、税金を払う代わりに借入金返済に回すことができます。とすると、残り25億円を5年間で返済することは、永ちゃんならば十分に可能です。

番組を見ての私の勝手な想像です。それでも矢沢永吉さんの葛藤は大変なものだったでしょう。先月発売のDVD『ALL TIME BEST LIVE』は、35億円を返済した漢(おとこ)として見てしまいます。国立競技場でのライブが楽しみです。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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