小規模企業共済のデメリット 第255回

経費

確定申告において「小規模企業共済等掛金控除」により掛金全額が所得控除できます。通常は会計事務所等から勧められて入るようです。うちの事務所では基本的に保険関係は一切勧めていませんので、お客様がご自身で加入した、または以前に入っていた場合のみです。

会計事務所が勧めるのは、事務所に手数料が入るからという理由もあります。保険にしても同様です。ほとんど保険代理店のような会計事務所もあります。業界では収益の3割は保険収入とも聞いたことがあります。保険に対する考え方の違いだと思いますが、うちでは本業に専念しています。

小規模企業共済だけに限れば、中小機構のHPにデメリットが載っています。共済金Aは個人事業を廃業した場合、または共済契約者が亡くなった場合に請求できます。個人事業主の場合、死ぬまで現役というのが最大のメリットではないでしょうか。その場合、死亡後でないともらえないとなれば、自分で使うことはできません。

共済金Bは老齢給付として請求できますが、65才以上で180ヶ月以上掛金を払い込んだ人が対象となります。180ヶ月ということは15年間です。貸付金として借り入れることはできますが、15年間は使用できないということです。事業をしている場合、大事なのはキャッシュが手元にあるか否かです。一旦払い込んでしまえば、自由に使えなくなりますので、私は保険は最低限としています。

掛金納付月数が20年未満で任意解約した場合は、共済金は掛金合計額を下回るとあります。加入期間が20年以上でも、途中で増額・減額した場合は下回ることがあるとなっています。であれば、貯金しておいた方がと、つい思ってしまいます。

中小機構HPの決算書をみると令和元年度の決算では、純資産が1,571億円減少しています。主な理由としてコロナウィルスによる景気悪化で信託資産が913億円減ったためとされ、大赤字となっていました。運用の失敗です。

目先の節税効果だけで判断せず、長い目で加入を検討しましょう。実際にいくら減税になるかを計算すると力抜けるくらい低い金額だったりします。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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