第323回 映画『サン・セバスチャンへ、ようこそ』

映画

ウディ・アレンの新作映画を毎年観るのが、ここ30年の恒例行事でした。ところが、別れた奥さんのミア・ファローからの誹謗中傷により、ニューヨークで新作が撮れなくなっています。

2020年には『唐突ながらウディ・アレン自伝』が出版され、もう映画の新作は観れないのかと心配していました。『アニー・ホール』(1977年)でアカデミー作品賞含め4部門を受賞した夜は、いつものようにブルースを演奏し、新聞記事で受賞したことを知ったくらいに、ウディは賞には興味ありません。

そのことが遠因となっているのか、ここ10年ほどはマスコミ、メディアからの攻撃がスゴいようです。今までウディの映画に出演するために列をなしていたような俳優が、出演を取りやめ、友人関係であった俳優たちも離れていくことが自伝には書かれています。かつて出演したことを後悔してると発言する俳優もいます。

そういったなかでの『サン・セバスチャンへ、ようこそ』(2020年)です。いつものニューヨークではなく、スペイン最大の映画祭であるサン・セバスチャン国際映画祭を舞台にしています。ウディの嫌いな映画祭です。

マスコミから攻撃される人ほどホンモノという自分の経験値から、攻撃されるほど応援したくなります。ご本人は画面には出てませんが、いかにもウディ映画で、幸せな気分になりました。物語そのものは軽いですが、売れない作家のモート・リフキン(ウォーレス・ショーン)は人生の意義を問い続けます。『8 1/2』『勝手にしやがれ』『男と女』『第七の封印』などのヨーロッパ映画のオマージュを捧げています。

映画講座もしているモートが、パーティでお勧めの映画を尋ねられて『忠臣蔵』、黒澤明の『影武者』を挙げたのには笑いました。2023年の次作が控えているそうです。これはフランスが舞台で、今から楽しみです。

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