第296回 書評『よみがえるロシア帝国』

書評

副島隆彦さんと佐藤勝さんの対談本です。佐藤勝さんは元外務省主任分析官で対ロシア外交の最前線で活躍し、2002年、鈴木宗男議員の外務省をめぐる疑惑事件の国策捜査で逮捕され、512日勾留され、2009年に最高裁で有罪が確定していますが、ロシアの専門家です。

いきなり安部元首相の殺害について、アメリカ専門家の副島さんは、SPのなかのアメリカのCIAの息がかかった人物がやったと私見を述べています。ある政治家は、SPは必ず東京から2人ついてくるところが、今回は1人だけだったと不思議がっていたとのことです。

佐藤さんによれば、ロシアがウクライナに侵攻した理由は、①NATOの東方拡大への反対、ウクライナ国内のロシア人の権利の保全、ウクライナのネオナチ一掃の3つであるとします。

副島さんは、戦争の初日から、一瞬のうちに集団洗脳が起きたことを危惧していました。「ロシアが悪い。プーチンがたくさんの女、子どもを殺している」という報道一色で、日本国民がまとめて洗脳されたのを、我々はまざまざと目撃した。これは心理作戦戦争「サイコロジカル・オペーレーション・ウォー」(通称サイオプ)であり、ロンドンのタビストック心理戦争研究所で研究されてきたものであり、コロナウィルスとワクチンにしても同様であるとの認識です。

今年の6月に出版された、フランス人のエマニュエル・トッドの『第三次世界大戦はもう始まっている』を紹介しています。トッドは「ウクライナ戦争の原因と責任は、アメリカとNATOにある」と言い切っています。佐藤さんによれば、これはヨーロッパの知識人の標準的な考えだそうです。

6月のドイツでのG7で、鍛えられた上半身を披露したプーチンを各首脳が揶揄したのを受けて、プーチンは「1人の人間のなかで精神も体も、すべてが調和のとれた形で発達するべきだ。調和するためには、酒を飲みすぎる悪い習慣をやめて、運動して、スポーツに励む必要がある」と返しており、副島さんはプーチンを「哲学王」としています。

しかし、佐藤さんは「ロシアが勝つのは確信しているが、プーチンがやっていることは間違っている」と逆の立場をとっています。

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