第408回 映画『揺さぶられる正義』

映画

監督は司法試験に29才の時に合格した上田大輔さん。有罪率99.8%の刑事司法の現実に絶望し、企業内弁護士を募集していた関西テレビに入社します。私の監査法人時代に、クライアントの社長から見込まれて企業内会計士になった後輩もいました。その時は、折角、公認会計士になったのに勿体ないことだと思いました。私自身は昔から上からの覚えがめでたくなかったので、そのお陰で今でも現役でいられるのでラッキーです。監査法人に残っていても、企業内会計士となっても、私の年令ではとっくに定年退職です。

上田さんは当初、関テレの法務担当部署でしたが、希望により記者となります。記者1年目から「揺さぶられっ子症候群(SBS)」を取材します。乳幼児の上半身を前後に激しく揺さぶることで頭部に損傷が生じる症候群のことです。1990年代から硬膜下血栓、脳浮腫、眼底出血の3兆候が揃えば、揺さぶりが原因である可能性が高いと診断されるようになります。2010年に入ってSBS事件での逮捕・起訴が急増します。

映画では4件の起訴ケースを追いかけます。1件は仮名ですが、3件は実名でご本人が登場されます。驚いたことに取材した4件のケースが全て無罪、あるいは控訴審で逆転無罪となります。そもそも3兆候揃ったらSBSと診断されることそのものが否定される現状にあります。

逮捕の時の映像は凄まじいものでした。もみくちゃにされ、この映像を見た人は誰でも「やったな」と思ってしまうでしょう。子どもと一緒に住めなくなり、子どもは児童相談所に預けられます。児相の方がよっぽでヤバそうです。疑われた親・祖母・義父などの苦しみは相当なものです。何年も収監され無罪となった人もいます。

無罪を勝ち取っていった秋田真志弁護士の立派さが際立ちます。逮捕された義父である今西貴大さんと接見したときに、職業的専門家として、彼は無罪だよと断言したのに感銘しました。今西さんは「私は無罪ではなく、無実です」と断言し、現在は司法試験合格を目指しています。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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福岡市東区箱崎の公認会計士・税理士 山崎隆弘事務所
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