オウムを内側から見た『A』『A2』、佐村河内守に密着した『FAKE』などのドキュメンタリー映画を撮ってきた森達也監督の初の劇映画作品です。
今から丁度100年前の1923年9月1日に発生した関東大震災で実際に起きた虐殺事件を描いています。公開は震災の日の9月1日です。森監督は、誰も演じてくれないのではと危惧していたそうですが、井浦新、田中麗奈の夫婦役に、東出昌大、永山瑛太、ピエール瀧などいわく付きの俳優が出演しています。瑛太はもっと自分の出番を増やして欲しいと要求するほどの意気込みだったそうです。
四国の讃岐から家族一同、瑛太を中心に15名で薬の行商のため、千葉県東葛飾郡福田村に来ていました。穢多(えた)として差別を受けていた人たちです。震災後、朝鮮人による日本人に対する殺戮が行われているという内務省からの通達により、村人はピリピリとしています。瑛太たちも商売を控えて、宿に留まっていました。木竜麻生演じる新聞記者は、自分が見たものを報道させてくれるよう、ピエール瀧演じる上司に食い下がります。
何もせずに15人が生活するには限界があり、旅行商たちは震災後5日経過後の9月6日に出発します。そこで、村人の自警団に呼び止められ、日本人かどうかを問い詰められます。そのうち、方言が通じず朝鮮人ではないかとやじられます。瑛太は逆に朝鮮人だったら殺してもいいのかと怒り、殺されてしまいます。続けて9人が殺戮されます。
残った6人は針金で縛られ、村人から責められていますが、そこで一人が「帰命無量寿如来」と称え、他の人たちが「南無不可思議光」と続きます。浄土真宗の「正信偈」です。まさに日本人でした。讃岐は妙好人の庄松さんで有名です。鳥肌が立ちました。
事件を追うだけでなく、井浦新、田中麗奈の夫婦の問題など、重厚なドラマとなっています。新聞が真実を報道しないという批判ともとらえれます。まさに今のコロナ・ワクチン騒動を彷彿とさせます。