映画漫画『はだしのゲン』のことは昨年のブログに書いていました。今回はドキュメンタリー映画です。この映画製作の契機となったのは、映画『オッペンハイマ―』に反発してのことだそうです。この映画は思い出しただけで、日本人として怒りが沸いてきます。『まだ怒っている』の中で、元広島市長の平岡敬さんが、アメリカは日本人をイエロー・モンキー、動物と思っていたと語っています。
『はだしのゲン』の跡地を案内している渡部久仁子さんが、作者中沢啓治さんの自宅跡を紹介します。今回の映画で知りましたが、ゲンは中沢さんの半自伝的なもので、実際に原爆に遭って体験したことを基に描いています。今は他の人の家になっていますが、ここでお父さん、お姉さん、弟が家の下敷きとなります。お母さんは物干し台にいたため、吹き飛ばされただけで、助けようとしますが、火災に巻き込まれ3人は亡くなってしまいます。中沢さん6才のときの体験です。
中沢さんは見たままを記憶する能力があり、原爆直後の風景は見たままを描いているそうです。今では、残酷すぎるということで、広島の「平和ノート」から『はだしのゲン』が削除されています。龍谷大学大学院の旅行で広島記念公園に行ったとき、来る度に原爆の悲惨さの度合がやわらいでいると、教授が嘆いていました。まさに風化しつつあるというか、原爆は投下されて仕方なかったという雰囲気になりつつあります。あと1週間終戦が早ければと言われますが、原爆を落とすまで降服させてもらえなかったと平岡元市長は言います。
『はだしのゲン』の中で、若い女性が顔がボロボロになって自殺しようとしますが、ゲンが止めます。阿部静子さんはまさにそのような人で復員してきた夫はビックリします。静子さんのお父さんは泣いて、娘と離婚してくれと頼みますが、ご主人は「離婚しません」と宣言し、50年添い遂げ、いまでは3人のこども、6人の孫に囲まれるおばあちゃんになっています。
ズッシリと胸に堪えるドキュメンタリー映画です。



