第311回 書評『資本主義の次に来る世界』

書評

著者はジェイソン・ヒッケルという経済人類学者で、数年間、南アフリカで出稼ぎ労働者と共に暮らし、アパルトヘイト後の搾取と政治的抵抗について研究してきています。

資本主義の限界ということは、最近、よく耳にします。そのことをデータを基に「第1部 多いほうが貧しい」で検証します。資本主義は「市場」「取引」という言葉で説明されますが、「市場」「取引」は数千年前から存在します。資本主義が他の経済システムと異なるのは「成長」を中心に組み立てられているからです。

成長は資本主義の最優先命令で、その目的は人間のニーズを満たすことでも、社会を向上されることでもなく、利益を引き出すことが最大の目的で、全ての産業、全ての国の経済は、終着点がないまま常に成長し続けなければなりません。対して、自然界の成長には限界があり、健全な均衡状態を維持します。成長がとまらないのは、ガンなどで起きます。細胞が成長そのものを目的として複製し続け、やがて死をもたらします。コロナワクチンに含まれているmRNAも成長が止まらないことが問題となっています。

500年にわたって、成長を維持するために、植民地政策、自然からの抽出などに依存していきました。成長のために常に「外」を必要とし、外から無料で価値を略奪したことにより可能となってきました。その結果、このまま経済が成長し続ければ、地球の生態系が崩壊してしまいます。

第2部「少ないほうが豊か」では、成長のない繁栄を示します。希少性、劣等感を満たすために大量消費をしており、大量消費を止める5つのブレーキとして、①計画的陳腐化を止める、②広告を減らす、③所有権から使用権へ移行、④食品廃棄を終わらせる、⑤生態系を破壊する産業を縮小する、を提示します。これだけ忙しく働いているのは、富裕層をより豊かにするためであり、個人の幸福感にはつながっていません。植民地時代のように結果的に搾取されていることに気付かなければならないとします。

タイトルとURLをコピーしました