第402回 映画『野火(1959)』

映画

大岡昇平原作、市川崑監督の1959年製作の映画です。同じ原作で塚本晋也監督・主演の『野火』(2014年)は公開当時に観ていました。今回、終戦80年企画で『ジョニーは戦場へ行った』とともに4K版として公開で、市川崑監督版は初めて観ました。

市川崑監督といえば『犬神家の一族』を思い起こしますが、「ビルマの竪琴」(1956)ではベネチア国際映画祭受賞、この『野火』では1961年・第14回ロカルノ国際映画祭でグランプリに輝いています。

10年前の『野火』を観たときに原作を読みました。大岡昇平自身のフィリピンでの戦争体験を基にしています。第二次世界大戦下、フィリピンのレイテ島を舞台に、病魔に侵された中年兵士が飢餓と孤独に苦しんだ末、目の当たりにした陰惨な戦場を描いています。

改めて原作を見てみると、途中で出会った日本兵が西に沈む太陽を見ながら「帰りたい。西方は極楽浄土だ。南無阿弥陀仏。なんまいだぶ。合掌」とほぼ原作通りの台詞があります。

あまり残酷なシーンは観たくないなと思っていましたが、さすがに市川崑監督の『野火』は観ているうちに引き込まれていきました。映画では、肺病を患った田村一等兵(船越英二)が病院にも部隊にも居場所がなくなり、戦場をさまよいます。飢餓で死んでいく兵士たちを横目に、田村は塩や芋、草や水で飢えをしのぐ。永松(ミッキー・カーチス)はさまよう兵士の一人で田村に近づいてきます。「サルを食べる」といいながら、実は同じ日本兵を殺して食べていることが判り、自分はエサであることに気が付きます。まさにこの世の地獄です。

戦地に行った兵士の桁違いの体験が身をもって迫ってきます。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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福岡市東区箱崎の公認会計士・税理士 山崎隆弘事務所
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