会社にお金を残しましょう 第272回

キャッシュを残す経営

うちの事務所のホームページのトップページは「会社にお金を残す経営」です。個人の所得と貯金の金額が比例しないように、会社の業績と会社に残る現預金は比例していません。個人の場合は、意識的に貯金しないと貯まりません。所得が高いからといって、貯金がたくさんある訳ではありません。例えば、医師の給料は他の職業と比べて高い傾向にあります。だからといって、お医者さんがたくさん貯金しているかというとそうとも言えません。稼いだ分だけ使ってしまえば、差引ゼロです。

会社の場合も、売上高がいくらあっても、利益が残っていなければ同じことです。経営者が極端に税金を支払うことを忌避している場合、いくら売上・利益を上げても、その分経費を計上し、結果として会社にお金が貯まっていきません。利益分だけ経費を使って、税金がゼロになったと喜んでいては、何年、経営してもお金はスカスカのままです。

中小法人の国税・地方税を含めた実効税率は利益が800万円までは24%ほどと低くなっています。これからもっと低くなると言われています。現状では利益の約4分の1を税金として支払います。ということは100万円利益があれば、25万円の税金を支払い、75万円が手元に残ることになります。ところが100万円の経費を決算対策として追加で使ってしまったら、確かに税金は25万円からゼロとなりますが、残るお金も75万円からゼロとなります。

最近はコロナ禍で融資を受ける会社さんが増えています。会社の場合、返済のための原資は利益しかありません。先ほどの例では残った75万円が返済原資となります。返済原資が足りなければ追加で融資を受けることになり、借入金が膨らんでいきます。

税金ばかりに目が行っていると、結局、会社の首を絞めてしまいます。ですので、うちの事務所ではお金を消費しての節税、保険での節税はお勧めしていません。個人の給与の場合は源泉所得税が天引きですので、あまり意識せずに納税しています。個人並みにも納税せずにお金を貯めることはムリです。納税しない限りはお金が貯まらない仕組みとなっています。

コロナ禍のような突然の環境変化に対応するためにも資金の蓄えが必要です。その度にお金を借りていては、返すのが難しくなり、キャッシュアウトしてしまいます。税率が高い個人で所得を抜くよりも、税率が低い会社に残した方がお金が貯まりやすくなっています。会社にお金を残す経営をしましょう。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

山崎 隆弘をフォローする
キャッシュを残す経営
シェアする
山崎 隆弘をフォローする
福岡市東区箱崎の公認会計士・税理士 山崎隆弘事務所
タイトルとURLをコピーしました