第399回 税金を払ってキャッシュを溜めましょう。

キャッシュを残す経営

ある社長と打合せ中に「利益の半分は税金で取られる」との発言がありました。かつては利益の半分が税金だったことがあります。その会社は利益を出してよく税金を払っていましたので、半分は税金が身体に沁みています。今の税率はどれくらいかと尋ねられましたので、「いまの実効税率(法人税・地方税合わせて)は34%で利益の3分の1程です。中小企業の場合は課税所得8百万円までは、実効税率24%です」と答えました。ですので、8百万円の利益までは約4分の1が税金で納めることになります。

これが個人の所得税となると、地方税は一律10%、所得税は累進課税で最大で45%(課税所得40百万円以上)ですから、最大で55%の税率です。半分以上です。法人の場合は累進課税ではないので、どれだけ稼いでも34%で収まります。法人で利益を出す方がお金が溜まりやすくなっています。上場会社の役員をしている友人から「利益を30億円計上して、10億円は税金を収め、10億円は株主に配当金を払って、10億円が残るはずだけどその通りにならない」との質問を受けました。他に何もなければ確かに10億円は残ります。ただ、借入金の返済や設備投資にお金が回れば、10億円がそのまま残ることはありません。

借入金の返済原資は、法人の場合は税金を引いた後の利益+減価償却費しかありません。税金を払ってお金を残しておかないと借入金の返済さえできません。利益分だけ経費を使ってしまって、税金がタダになったと喜んでいてはいつまでたってもお金は溜まっていきません。借入金があればその返済ができずに、借入金が増えるばかりとなります。

最近は億単位の利益を計上するお客様も珍しくなくなってきました。その会社さんは一様に資金繰りの心配がなくなったと仰います。個人でも、法人でも、税金をほぼ払わない人ほど、何故か税金の心配をします。税金は後からついてくるものです。まともな経営をしていれば、納税分のキャッシュが残っているはずです。まず利益を計上することを考えましょう。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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