第306回 退職金課税の改正見込み

税制改正

毎年6月に閣議決定される「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)は、年末の予算編成に向けた基本姿勢や、政権として力を注ぐ政策の方向性を示すものとなっています。

今年の骨太の方針のうち労働分野において、終身雇用前提の退職金への課税見直しが挙げられています。ただし、税制改正大綱のような確定的なものではありません。今後の税制改正を見込むものとなります。

現行の退職金課税の仕組みは、勤続年数20年以下と20年超で異なります。20年以下の場合、年40万円の控除額となって20年で800万円の控除となります。20年超の場合、21年目から年70万円の控除額となります。退職所得の金額は、退職金から控除額を差し引いた金額を1/2にしたものです。控除額も大きく、更に1/2にするため、最も優遇的な税制となっています。例えば、天下りをすれば、何回も退職金がもらえ、その度に優遇を受けることになります。

令和3年度の税制改正において、この1/2に少し手が入り、勤続年数5年以下で、控除額後の金額が300万円超の部分は、1/2の課税適用はなくなりました。ただし、従業員の場合だけであり、役員であればこの適用はありません。

今回の骨太の方針で問題としているのは、勤続20年を超えると年70万円に控除額が増えるので、終身雇用を前提とした税制となっており、若手や中堅の社員が離職・転職を思いとどまらせる一因となっているのではということです。成長分野への労働移動を促すとしています。

この改正が行われるとすれば、21年目からの控除額が70万円から40万円に減ることになり、退職者にとっての増税となります。支払う法人側は、源泉控除額が増えて、その分、本人への支払が減るので負担は変わりません。あくまで見込みですので、適用時期、適用方法については今後の税制改正を待つことになります。

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